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ソリマチの経営応援通信
経営相談の現場から[シリーズ第21回]小規模事業者持続化補助金で一番重要なこと
起業応援・創業ガイド

経営相談の現場から[シリーズ第21回]小規模事業者持続化補助金で一番重要なこと

掲載日 : 2026.03.16 / 最終更新日 : 2026.03.05

筆者は経営コンサルタントとして、日々経営者の方々のお悩みを伺っています。このシリーズは「経営相談の現場から」というテーマで、中小企業経営者や個人事業主の方から実際にあったご相談内容を取り上げます。

過去の記事で、美容サロンを経営するCさんからの「補助金の説明資料が難しすぎる」というご相談を取り上げました。今回は再び、Cさんからの補助金に関するご相談を取り上げます。創業直後から使える国の補助金「小規模事業者持続化補助金」です。

小規模事業者持続化補助金、不採択でした

Cさん 「以前、補助金の基礎知識を教えてもらった後、小規模事業者持続化補助金に挑戦しましたが、残念ながら不採択でした。あまり時間をかけず気軽に申請してしまいましたが、思ったより厳しいんですね。」

筆 者 「はい、小規模事業者持続化補助金はポピュラーな補助金ですが、やはりしっかり準備して臨む必要があるんですよね。ひとりで個人事業を営む方にも申請できますし、年3~4回公募されているのでチャレンジしやすいですが、審査でおおよそ半分程度が不採択になる補助金です。」

Cさん 「近いうちにまたチャレンジしたいです。電子申請システムに入力した『経営計画』と『補助事業計画』を印刷して持ってきました。アドバイスをもらえますか?」

筆 者 「もちろん。拝見しますね。」

どの項目がまずかったんだろう?

Cさん 「どの項目も、そんなに難しくなかったんだけどなあ。どこがまずかったんだろう。」

筆 者 「Cさんの様式2『補助事業計画』の取組内容の項目、よく書けていますね。ヘアサロンの客単価を上げるために新たにエステメニューを導入し、脱毛機械を購入する・・・という取り組みですね。補助金を使って購入する脱毛機械がどのように業績に寄与するのか、ポイントを押さえて分かりやすく書けています。」

Cさん 「そうなんです。サッと書いたとはいえ、きちんと書いたつもりだったんですよ。」

筆 者 「ただ一方、様式2『経営計画』の『2.顧客ニーズと市場の動向』は内容が乏しいです。特に『2-1.市場の動向』の項目は、『脱毛市場規模は○億円で、エステ市場全体の○割である』という記載に留まっています。」

Cさん 「『2.顧客ニーズと市場の動向』は、あまり重要な項目とは思えなかったので・・・。ネットで検索したら市場調査会社が公表している脱毛市場のレポートが出てきたので、それを見ながら書きました。それ以外に何を書けばよいのか分かりませんでした。」

筆 者 「『2.顧客ニーズと市場の動向』は軽視されがちですが、実は一番重要なんですよ。」

Cさん 「えっ、そこが一番重要?」

つい軽視しがちだけど、実は一番重要な項目「顧客ニーズと市場の動向」

筆 者 「はい。意外かもしれませんが『2.顧客ニーズと市場の動向』が成否を分けると言っても過言ではありません。」

Cさん 「なぜですか?脱毛機械を買いたい理由には、直結しない項目じゃないですか?」

筆 者 「公募要領にある審査項目の説明を読むと、大部分の審査観点が、『2.顧客ニーズと市場の動向』を踏まえた内容になっているかどうか?が大きく影響するつくりになっているからです。」

Cさん 「審査項目はこんな仕組みになっていたんですね。土台になる『2.顧客ニーズと市場の動向』があやふやだと、審査全体で良い点がつきにくくなるというわけですか。」

筆 者 「はい。補助金の採択率を上げるには、公募要領に書かれている審査項目の説明を熟読することが欠かせません。小規模事業者持続化補助金の場合は、このように自社の経営環境を踏まえて取り組みの妥当性を説明することが、明確に求められています。」

では、「顧客ニーズと市場の動向」にはどんなことを書けば良い?

Cさん 「『2.顧客ニーズと市場の動向』が重要という事は分かりましたが、どんなことを書けば良いのでしょうか。」

筆 者 「Cさんの場合、脱毛機械の補助金を申請したいわけですから、脱毛機械の導入背景となるような内容を書きましょう。顧客の声や市場動向を踏まえて経営を考えていることをアピールするんです。」

Cさん 「私が書いたのは、調査会社のレポートに載っていた脱毛市場規模金額でした。今回脱毛機械を導入することとは、何の関係もない話ですね・・・。」

筆 者 「Cさんは新たに脱毛メニューをつくるために脱毛機械を買うのですよね。脱毛メニューをつくろうと思ったのは、なぜですか?」

Cさん 「お客様からご要望があったからです。近所に脱毛サロンがないから、ここで出来たらいいのに、って。最近はお母様が中高生の娘さんが通う脱毛サロンを探されるケースもあるんですよ。」

筆 者 「なるほど、そうでしたか。Cさんの脱毛機械導入には、しっかりとした市場動向と顧客ニーズの背景があるじゃないですか!そのことを、率直に書けば良いんですよ。」

Cさん 「えっ、こんな小さな話でいいんですか?」

筆 者 「もちろんです。日本全体の市場規模や動向を書いてももちろん良いですが、実際、Cさんのお店に関係があるのは、せいぜい数km圏内のニーズや競合店の動きじゃないですか?」

Cさん 「確かにそうです。じゃあ、『2-1.市場の動向』の項目には、全国の市場規模にプラスして、近所に脱毛サロンがない、という説明を書こうかな。『2-2.顧客ニーズ』の項目には、お客様から実際に脱毛メニューのご要望があるという話を書くとよさそうですね。」

筆 者 「いいですね。よりグレードアップするには、その『近所に脱毛サロンがない』という説明を、半径何キロ圏内に競合店がひとつもない、等といった感じで具体的・客観的な事実説明にすると良いです。『お客様から実際にご要望がある』ことについては、どんな属性の方から、どんなご要望が、何件くらい来ている、等、これも具体的・客観的に掘り下げるとより説得力があります。」

補助金の申請書づくりは実際の経営に役立つ

その後、Cさんは小規模事業者持続化補助金を申請して無事に採択され、脱毛機械を導入されました。Cさんは、補助金の申請書づくりを通して実行計画や営業目標を明文化し、それを意識して日々脱毛メニューの販売に取り組んでいます。補助金の申請書づくりは「補助金をもらうために仕方なく作成するもの」ではなく、補助金を活用した取り組み(設備投資や新商品、新メニュー開発など)に向けた頭の整理に活用できるものになっています。ぜひ前向きに取り組んで、補助金そのものだけでなく、申請書を経営計画の枠組みとしても活用しましょう。

(注)本記事の内容は実際にあったご相談内容をもとにしていますが、事業者様を特定できないように多少のアレンジを加えております。
(注)本記事は、執筆時点(令和8年2月)で最新の公募内容(小規模事業者持続化補助金の「第19回公募要領」「申請システム操作手引き(第18回公募申請)」)に基づいて執筆しております。
ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件