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東京都では2025年からカスタマー・ハラスメント防止条例が施行されており、中小企業向けに対策強化を促進する支援制度など、具体的な取り組みが進められています。このような動きは、カスタマー・ハラスメントが現代社会における課題として認識が広がっている結果といえるでしょう。
この記事では、カスハラとはどのような行為を指すのかといった基本的な考え方から、企業が取るべき対策まで解説していきます。
近年では、「カスハラ」という言葉が話題になることが増えてきました。カスハラはカスタマー・ハラスメントの略称で、顧客や消費者が立場を利用し、従業員などに対して不当な要求や威圧的な言動をするハラスメント行為です。東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例では、「顧客等から就業者に対し、業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と説明されています。
具体的には、従業員などに対して手を上げるような身体的な危害、大声での叱責、SNSで拡散すると脅す行為、土下座の強要、金銭補償の要求といった行動がカスハラに当てはまると考えられます。
これらの行為は、従業員の安全や職場環境に悪影響を及ぼすものです。カスハラは従業員に精神的な苦痛を与える可能性があり、休職や退職の原因となる場合もあります。東京商工リサーチが2024年に実施した「企業のカスタマー・ハラスメントに関するアンケート調査」では、調査対象となった企業の19.1%がカスハラ被害を経験しており、そのうち13.5%の企業では従業員が休業・退職したとされています。 また、店舗などでカスハラによるトラブルが発生すると、当事者ではない第三者に悪い印象を与え、企業イメージの低下を招くリスクもあります。大切な人材や企業の評価を失わないためにも、カスハラは企業が対策するべき問題といえるでしょう。
カスハラに適切に対応するためには、明確な対応方針と社内マニュアルの整備が有効です。
マニュアルには、「どのような行為がカスハラに該当するか?」を明文化しておきましょう。シチュエーションによっては、カスハラかどうかの判断が困難な場合があるため、カスハラを認定する基準を決めて社内で共有しておくことが重要となります。 また、カスハラが発生した場合の対応方法も決めておきましょう。上司への報告など、具体的なフローを整えて共有しておけば、いざという時に焦って誤った対応をしてしまう可能性を低減する効果があります。このように、事前に方針を定めて理解を促進させておくと、従業員の心理的安全性の確保につながります。
悪質なカスハラ行為には、警察や弁護士に相談するべき場合もあるため、外部機関との連携方針もマニュアルに含めておくとよいでしょう。
カスハラには然るべき対応が必要ですが、顧客からの真っ当なクレームまでカスハラ扱いしてしまうと、企業としての信頼を損ねることにつながりかねません。
正当なクレームは企業の商品やサービスの問題点を見直して、質の向上をもたらす声となり得るものです。クレームをカスハラと判断して対応してしまうと、企業の成長機会を失ううえに、消費者に悪い印象を与えてしまう可能性があります。
対するカスハラは、正当性のない迷惑行為といえます。クレームとカスハラを見分けるポイントは、「要求している内容が妥当か」が重要な判断基準です。要求に正当性や妥当性があればクレーム、なければカスハラといえるでしょう。 また、「侮辱的な言動など、他者を傷つける行為があるか」も重要な判断材料です。商品の不具合についての正当な指摘であっても、大声で暴言や人格否定をするよう発言がある場合はカスハラであると判断できます。
この線引きが社内で共有されていれば、いざという時に現場の混乱を防ぎつつ適切な対応ができるでしょう。
カスハラは被害者目線で話題になることが多いですが、自分自身や自社の従業員がカスハラの行為者となってしまうかもしれない点に注意が必要です。
例えば、発注先の業者がミスをした場合に、感情的になってしまい行き過ぎた言動をしてしまうことがあるかもしれません。相手に非があったとしても、社会通念に反するような叱責などをしてしまうと、相手の業者との関係に甚大な影響を与えてしまうでしょう。感情的な言動は問題の解決を遅らせるうえに、自社の評価を下げることにもつながります。トラブルが発生したとしても、過剰に相手を責めることはせずに冷静に対処するべきです。
お金を支払う立場にいると、「多少の無理も許される」といった誤った認識を持つことがあるかもしれませんが、そのような思考がカスハラの引き金になる場合があります。どのような行為がカスハラに該当するかをしっかりと意識して、被害への対策と同様に加害者にならないための心構えをしておくことが現代社会で求められる姿勢といえるでしょう。
内田陽
金融系の制作業務を得意とする編プロ、ペロンパワークス・プロダクション所属のライター兼編集者。雑誌や書籍、Webメディアにて、コンテンツの企画から執筆までの業務に携わる。金融関連以外にも、不動産や人事労務など幅広いジャンルの制作を担当しており、取材記事の実績も多数。