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掲載日 : 2026.02.14 / 最終更新日 : 2026.02.18

年末年始になると忘年会やパーティーなどの社内イベントを実施する会社もあるでしょう。じつは、社内パーティーに参加したり、社内忘年会などで実施されるビンゴ大会の景品が当たったりしたら、税金がかかることがあるのです。
第10回では、パーティーと税金の関係にスポットを当ててみましょう。
社内旅行や運動会などの社内レクリエーションに参加した場合や、忘年会やパーティーなどの社内イベントで景品をもらった場合には、基本的に税金はかかりません。
そんなこと当たり前のことだと思う人も多いかもしれません。
しかし、課税庁の見解によれば、会社の役員だけを対象とした社内イベント等に参加した場合は、課税の対象となるというのです。また、社内イベント等に参加しなかった従業員に対し、その参加に代えて金銭を支給した場合も同様に、課税の対象になるといいます。
なぜこのような税金の取扱いがなされるのでしょうか?
この税金の取扱いを理解するうえでポイントとなるのは、「経済的利益」という考え方です。
経済的利益とは、直接の金銭等のやり取りがない場合において得た利益のことをいいます。この経済的利益が生じた場合、税金のルールでは、原則として課税の対象になるとされています。
たとえば、会社の資金事情が厳しいときに、従業員に対して金銭による給与等の支給に代えて物品等を支給する代物弁済という行為があるのですが、このようなケースも給与等の支給があったとして取り扱われることとなります。
会社の従業員が得る収入といえば、給与や賞与(ボーナス)など金銭で受け取るものが一般的ですが、税金のルールでは、金銭で得る収入のほか、従業員が会社から物品やサービスの給付を受けた部分についても給与等の支給があったとみなし、原則として課税の対象とするのです(経済的利益の例については、所得税基本通達36-15を参照)。
一方、経済的利益が生じた場合でも課税の対象としないケースがあります。前述した課税庁の見解をもう一度みてみると、課税されないためのポイントは以下の3つに整理することができます。
(1)機会の公平性が確保されていること
社内イベント等が一部の従業員のみを対象とするものではなく、対象者を従業員全員(または会社の部や課の全員)とするものであれば、忘年会などの実施費用を会社が負担しても、その経済的利益は原則として課税の対象となりません。
(2)金額について社会通念上の妥当性があること
社内イベント等における会食の費用や景品の金額などが高額である場合は、課税の対象となる可能性があります。どの程度を高額とするかなどの具体的な金額に関するルールはありませんが、社会通念上、妥当な金額である必要があります。
(3)現金や現金同等物(商品券などの換金性の高いもの)を支給しないこと
基本的に、会社が従業員に対して現金を渡す行為は、給与等の支給があったとみなされます。ギフト券や商品券などの換金性の高いもの(現金同等物)を社内イベント等の景品とする場合も同様です。
経済的利益に対して課税が生じるケースにはどのようなものがあるのでしょうか?
以下、具体的にみてみましょう。
まず、社内イベントとして開催されるビンゴ大会や抽選大会の景品は課税の対象となります。
これは、ビンゴ大会や抽選大会では、抽選の結果によって景品が当選するという機会が与えられるためです。全従業員が参加可能なイベントであっても、当選者のみに景品が付与されるため、前述した機会の公平性の確保という要件をみたしません。
この場合、ビンゴ大会等の景品を得るという経済的利益は課税の対象となり、また、抽選方法の偶発性が高いことや勤務の対価として支給されるものにはあたらないことから、当選者の「一時所得」(所得税法第34条第1項)として取り扱うことになります。
ただし、一時所得の所得金額の計算上、50万円の特別控除が適用されるため、景品以外の他の一時所得との合計額が年間50万円を超えない限り税金は生じません。
次に、会社役員のみを対象としたパーティーなど、対象者が限定されている社内イベント等の費用を会社が負担した場合も、機会の公平性の確保の要件をみたさないため、その経済的利益は課税の対象となります。
同様に、成績優秀者を対象としたパーティーや旅行を実施する場合、業績の良かった人に社内表彰などで景品を渡す場合などについても、対象者が限定されているため、その経済的利益は課税の対象となります。
他方、経済的利益に対して課税が生じないケースには、どのようなものがあるのでしょうか?
たとえば、「永年勤続者への記念品」や「創業記念などの記念品」については、高額すぎなければ課税の対象とはなりません。
また、従業員に対して値引き販売をする場合も、値引率が一定程度一律に定められており、値引率が通常販売価額の30%以下であれば、課税の対象となりません。
そのほか、会社が従業員に対して食事補助(会社が従業員の食事代を補助する福利厚生のしくみ)を実施する場合も、1カ月あたりの補助額が税抜3,500円以下の場合には、課税の対象となりません。
会社が実施する食事補助が課税対象とならないポイントは、①現物支給であること(弁当支給や社員食堂で食事を提供するなど、現金で支給しないこと)、②全従業員を対象とすること、③食事価額の50%以上を従業員が負担していること、④1カ月あたりの補助額が税抜3,500円以下であることなどです。
令和8年度税制改正では、昨今の物価上昇の状況等を踏まえて、この1カ月あたりの食事補助額の上限額が、月額税抜3,500円から月額税抜7,500円に引き上げられる予定です。
このように、社内ビンゴ大会等で景品を得た場合には、その経済的利益に対して課税が生じます。この場合、前述のとおり、当選者の「一時所得」となり、50万円までは課税されません。しかし、当選者がその年にふるさと納税を行なっていた場合は、注意が必要です。
これは、ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益が一時所得に該当するためです。社内ビンゴ大会等の景品に係る経済的利益とふるさと納税の返礼品に係る経済的利益の合計額が年間50万円を超える場合、税金が生じてしまうのです。
思いもよらないかたちで申告漏れにならないよう、判断に迷う場合は、税理士等の専門家や税務署等に相談すると良いでしょう。
税理士 武田紀仁(たけだのりと)
たけだ税理士事務所 所長税理士
東北工業大学 ライフデザイン学部 経営デザイン学科 准教授
クリエイターや文化芸術団体支援のための税理士事務所を設立し、会計・税務・経営に関するアドバイザリーサービスを行う(たけだ税理士事務所)。大学では、財務会計論、簿記論、租税法実務などを担当。研究では、主に非営利組織体の会計・税務・情報開示に関する実証的な研究に取り組んでいる。